研究では、まずクラックとコンリート表面の間に発生する定在波を利用した(それぞれ周波数及び時間領域での)超音波利用の非破壊検査式を研究・開発した。すなわち、まず周波数領域ではMEM(最大エントロピー法)による手法を、次に時間領域ではダイナミックモデルと最尤法使用によるものを提案した。具体的には、前者は周波数スペクトルのピーク間隔より、また後者はクラックのさをパラメータにした尤度関数の最大化により、クラックの深さを求めようとするものである。この定在波モデルに基づく方式は、超音波センサの波長が粗骨材のサイズより小さい場合に特に有効である。 なお、波長が粗骨材のサイズに比較して長い場合は、先に提唱した多重反射波モデルが有効であり、本課題では、まだ未研究であった周波数領域の検査方式を引き続き研究・開発し、コンクリート表面から600mmの深さまでの任意のクラック、空洞を1個の超音波センサで容易に検出できる非破壊検査方式を見い出した。具体的には、受波信号のスペクトルから基本反射波のスペクトルを差し引いたものの半波整流波形に自己相関関数を適用することにより、多重反射波の周期、換言すればクラックの深さを求めるものである。現在、本研究成果は非破壊検査協会誌に投稿中である。
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