研究概要 |
本研究の目的は「福祉制御工学」というパラダイムを確立し,大学の中にその受け皿を作ることである。多岐にわたる分野の中でも特に,制御と計測の面から高齢者や障害者の支援を目指し研究を行っている。これまで福祉制御工学の体系化への第一歩として,後述のような研究項目を設定し,いずれも「福祉」と「制御」を結び付ける重要な要素(安全性,使いやすさ,ロバスト性,安価など)を抽出し考察を加えており,最終目標である体系化へつながる成果が得られている。 これまで具体的に進めている研究項目は以下のとおりである。 (1)高齢者支援のためのパワーアシストシステム 外乱オブザーバなど本研究室で研究実績のあるロバスト制御という観点からパワーアシストロボットの新しい制御手法について検討している。特に,介護動作補助や労働補助など実際の応用場面を大いに考慮し,力センサレス化やインピーダンス制御の応用などいくつかの成果があがっている。 (2)パワーアシスト車椅子の多機能制御システム 障害者の行動範囲を広げうるパワーアシスト車椅子の多機能制御システムの研究として,段差越えのためのウィリー機能の実現を目指している。ヤマハ製パワーアシスト車椅子JWIIを用いた実験的検討を行っている, (3)動力義足による歩行支援技術開発 歩行困難者の歩行を安全にし,かつ疲労を軽減することを目的として,歩行支援技術の確立を目指している。歩行中の歩容推定を基本技術に,駆動装置を有した動力義足における歩行制御法を提案し,平坦面や階段,坂における検討を行っている。 (4)独居老人や高齢者施設における異常行動モニタリングシステム 簡単なカメラを用いた高齢者モニタリングのための新しいシステムを提案し,非日常性を自動的に検出する研究を行っている。固有空間法を応用した検出手法により,ある程度の異常動作が検出可能であることを示し,さらに,工場で動く産業用ロボットの異常動作検出にも応用できることを示している。 以上についてはまだ課題も多く,今後も研究を進める予定である。
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