研究概要 |
平成14年度に得られた結果は次の通り. KiK-net地震観測地点は新たに32地点を追加し,合計102地点,濃尾平野は強地震観測地点の44地点について,微動H/Vと地震動H/Vの対比を地震増幅特性に最も重要である一次ピークに着目してその適応性を評価した. (1)まず,微動H/Vの一次ピーク振幅の大きさから「明瞭度」のランクをA, B, Cと定義すると,B以上はKiK-net83%,濃尾平野98%ときわめて高い確率で微動H/Vには比較的明瞭なピークが見られる.Cの多くはKiK-netの岩盤地点であるため,以下の検討はA, Bを母集団として検討した. (2)一次ピーク周波数の対応度について,微動をf_0,地震をf_<e0>として,(1)ランクA:0.8f_<e0>≦f_0≦1.2f_<e0>,(2)ランクB:0.5f_<e0>≦f_0<0.8 f_<e0>;1.2f_<e0>≦f_0≦1.5f_<e0>,(3)ランクC : f_0<0.5f_<e0>;1.5f_<e0><f_0と定義すると,濃尾平野ではB以上;89%,KiK-netではB以上;78%であり,微動H/Vと地震動H/Vの一次ピーク周波数は,堆積地盤では非常に良い対応,硬質地盤においても概ね良い対応関係が認められる. (3)ピーク周波数の対応度がB以上の地点について一次ピーク振幅の対応度について検討した.微動のピーク振幅をA_0,地震をA_<e0>として,(1)ランクA:0.8A_<e0>≦A_0≦1.2A_<e0>,(2)ランクB:0.5A_<e0>≦A_0<0.8A_<e0>;1.2A_<e0>≦A_0≦1.5A_<e0>,(3)ランクC : A_0<0.5A_<e0>;1.5A_<e0<A_0とすると,B以上はKiK-net;82%,濃尾平野62%であり,比較的多くの地点で微動は地震動と対応すると言える.しかし微動H/Vに一次ピークが見られた全地点中に対しては,各々62%,55%であり,それほど割合は高くないことに注意する必要がある.一次ピークの振幅比(A_0/A_<e0>)は,概ね0.5〜2Hzの範囲ではこれより長周期,短周期側に比べばらつきが小さい傾向が認められ,この周波数範囲では推定の信頼度が高くなる可能性があるが,今後さらにデータを蓄積する必要がある. 以上より,1)微動H/Vには非常に高い割合で一次ピークが出現する.2)一次ピーク周波数は地震動H/Vとの対応が見られ,ばらつきも小さいため,適用性は高い.3)一次ピーク振幅は地震動H/Vとの対応が概ね良いが,周波数によってはばらつきが大きくなるため,適用性は高いとは言えない.
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