研究概要 |
従来の海岸地形変化予測モデルは,海岸の構成材料は均一な粒径の砂礫であることを前提としているため,移動しながら粒度組成が変化していく混合砂礫の輸送現象を扱えず,混合砂礫海岸の変形過程を予測するのは困難であった.本研究では,現地海岸にも適用可能な混合砂礫海岸の地形変化を定量的に予測するモデルを構築することを目的とし,実験・理論展開・現地調査のそれぞれの側面から実証的な研究を行う。平成13年度は,大型水槽における実験結果を波による流速波形の前傾性の観点から再整理するとともに振動流装置を用いた実験を実施し、混合粒径底質の移動機構の把握と漂砂量データの蓄積を行った。 任意波形振動流装置を用いて,長さ約1.5mの観測部分に細砂と粗砂をさまざまな割合で混合した底質を敷き詰め,振動流作用下での砂粒子の移動機構を測定した。計測した項目は,流速,漂砂量と地盤内部の粒度分布の変化である。高精度で能率良く粒度分析を実施するためにレーザ回折式粒度分析器を用いた。また,これらの計測と同時に,装置側面から底質の移動状況を現有の高速ビデオカメラで撮影し,撮影画像を解析することにより,砂粒子のラグランジュ的な移動速度と移動層厚を算定した。漂砂量は,観測部両側に設置したサンドトラップに捕捉された砂の質量と,観測部内における砂の移動量から算定し、観測部内の底面微地形の発達過程は砂面計で計測した。混合粒径底質では,細砂は粗砂の影響を受け移動しにくくなり,粗砂は細砂の影響を受け移動しやすくなることが見出された。このような異粒径底質間の干渉機構は,一方向流れでは,移動限界掃流力の変化としてモデル化されている。振動流条件では,繰り返し外力のもとで表面の粗粒化や直接的な運動量交換が生じることを明らかにし,計測結果からこれらをモデル化することにより,局所的な漂砂量を算定するモデルを提案した。
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