研究概要 |
本研究は,不確実な動的環境要因を明示的に表現しうる枠組下で,社会基盤施設の投資および運用における動的な最適意思決定問題を考察するものである.より具体的には,まず,社会基盤施設の整備・運用プロジェクトを,以下のように定義する:a)相互関係がグラフ構造として表現されるactivity(意思決定項目)を持ち,b)その各種意思決定および確率的環境に依存した不確実なcash flow streamを多期間にわたって生むもの.そして,a)で定義される意志決定項目を制御変数,b)で定義される確率的cash flow streamに対する期待効用を目的関数とする確率的動的制御問題を考える. 本研究の内容はおおよそ2つの柱から成る:(1)連鎖的な(グラフ型)意思決定構造をもつプロジェクトの意思決定・評価法,(2)不完備市場リスクの評価法.(1)については,各activity間の相互関係を一般的なnetworkとして表現する枠組みを提案し,連続時間・連続状態での定式化および基礎的性質の解析を行った.さらに,任意の構造のオプション評価が標準形相補性問題として統一的に扱えることを明らかにし,効率的なアルゴリズムを開発した.(2)については,単純なオプション構造の場合を対象として,不完備市場リスクと完備市場リスクの両者が含まれるプロジェクトを整合的に評価する方法を開発した.その提案モデルは,無裁定原理から導かれるmartingale測度(状態価格)推定問題に,K-L情報量に関する制約を導入したものである.これを連続時間・連続状態で定式化し,基礎的性質の解析を行った後,再帰的計算に基づく効率的な評価アルゴリズムを構築した.さらに,タイミング選択権がある場合("アメリカン・オプション"),プロジェクトの買手と売手のゲーム問題となることを明らかにし,その評価法を開発した.
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