研究概要 |
1.断面,柱内法長さを共通として,袖壁長さ,袖壁鉄筋比および袖壁厚さを変動要因とした袖壁付き柱の曲げせん断実験を行った.実験よって得られた結論は以下のとおりである.(1)袖壁長さが柱せい以下の場合には,曲げ降伏し,部材角1/100まで安定した復元力特性を示した.袖壁長さが柱せいを超えるものは,部材角1/200で壁板と柱との境界面でせん断破壊した.(2)袖壁付きの柱のせん断破壊には,一体型のせん断破壊と袖壁と柱との境界面でのスリップ破壊の破壊形式があり,袖壁横筋量が少ない場合には,スリップ破壊が起こる.(3)現在耐震診断等で用いられている,袖壁付き柱の曲げおよびせん断終局強度は実験結果との適用性が悪い. 2.袖壁付き柱を含む1層1スパン骨組みの実験を行なった.柱の断面と内法寸法は前述した試験体と共通とし,スパン長さも一定とした.袖壁長さを変動要因とした.本実験で得られた結論は以下のとおりである.(1)梁端降伏が起こる場合には,袖壁付き柱を含む骨組みであっても大きな変形能力を示し,純ラーメン骨組みと同等の耐震性能を示した.(2)袖壁付き柱と梁との接合部における剛域は,袖壁と梁との接合面が引張りとなる側と圧縮となる側で異なる.圧縮となる側では袖壁と梁との接合部境界面から柱せいの1/4倍ほど中に入った位置まで剛域と考え,引張りとなる側では袖壁を無視して剛域を設定することが必要である. 3.上記実験結果を3次元FEM解析で追跡し,袖壁横筋のスリップ破壊防止効果について調べるとともに、曲げ終局強度とせん断終局強度式を提案した.この提案式は.過去の実験結果も含めて実験結果と非常に良い適応性を示した.
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