研究概要 |
近年我が国で施工例が増えつつあるスチールハウスでは,板厚0.4mm以上2.3mm未満の開断面形鋼部材用いられるが,板厚が非常に薄いため,局部座屈に加えて板要素接合線が初期の断面位置から移動するゆがみ座屈が発生する.本研究は,超薄肉形鋼部材の局部座屈・ゆがみ座屈・全体座屈の相互関係を明らかにする目的で計画されたもので,本年度は圧縮及び曲げ実験実験を行った. I.リップ付き溝形鋼短材中心圧縮実験 試験体は公称板厚1.0mmの冷間成型リップ付き溝形鋼短材で,実験変数はウェブせい,ウェブせい-フランジ幅比およびタイバーの有無の3種類とし,試験体材長はウェブせいの3倍とした.代表的な断面はc-150x75x25x1.0である.実験並びに降伏線理論による解析から,以下のような結果を得た.(1)破壊形状は,座屈半波長が一定の局部座屈による破壊と,ウェブとリップ-フランジ接合線で座屈半波長が異なるゆがみ座屈による破壊に分けられる.(2)荷重-変形関係ではウェブせい,ウェブ-フランジ比の違いによって最大耐力および劣化勾配に違いが見られたがタイバーの影響はほとんど見られなかった.(3)最大耐力は有効断面積,断面欠損を考慮した偏心圧縮だけでは評価できない試験体もあり,ゆがみ座屈を考慮した評価式が必要である.(4)実験値と解析値の耐力比の平均値は1.01,標準偏差は0.23で解析の精度はよい. II.リップ付き溝形鋼部材曲げ実験 試験体に用いた鋼材はウェブせい300mm,フランジ幅40mm,リップ長15mm,板厚1.0mmの冷間成型リップ付き溝形鋼で,曲げ材の単純支持支店間距離は4200mm等曲げ区間の長さは2200mmとした.実験並びに曲げ材の耐力評価から以下のような結果を得た.(1)破壊は,ウェブ局部座屈(板座屈)→横座屈・ゆがみ座屈(全体座屈)→横座屈に伴うフランジの局部座屈と進行した.ただし両リップを断続的につないだ試験体ではゆがみ座屈は発生しなかった.(2)ウェブの局部座屈発生点耐力は,補剛材によって上昇させる事が可能であるが,最大耐力はあまり変化しない.(3)試験体の最大耐力は,ゆがみ座屈補剛を施した試験体以外は横座屈ではなくゆがみ座屈によって決定されたと考えられる.
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