研究概要 |
近年我が国で施工例が増えつつあるスチールハウスでは,板厚0.4mm以上2.3mm満の開断面形鋼部材用いられるが,板厚が非常に薄いため,局部座屈に加えて板要素接合線が初期の断面位置から移動するゆがみ座屈が発生する.本研究は,超薄肉形鋼部材の局部座屈・ゆがみ座屈・全体座屈の相互関係を明らかにする目的で計画されたもので,本年度は圧縮及び曲げ実験実験を行った. I.リップ付き溝形鋼柱材中心圧縮実験 試験体は公称板厚1.0mmの冷間成型リップ付き溝形鋼短材で,実験変数はウェブせい(2種),ウェブせい-フランジ幅比(2種),リップの有無および,材長(2種)の4種類としとした.代表的な断面はC-100_x50_x12_x1.0である.実験から,以下のような結果を得た.(1)破壊形状は,主にウェブ-フランジ幅比が0.5のものに見られる局部座屈型と,1.0のものに見られるゆがみ座屈が他の2種に大別できる.(2)すべての試験体においてウェブ,フランジに局部座屈が見られるが,局部座屈は板要素の幅圧比のみならず,板要素間の相互作用により耐力が決まる.(3)有限帯板法による最大耐力の評価は,全体的に安全側の評価を与える. II.リップ付き溝形鋼部材曲げ実験 試験体に用いた鋼材はウェブせい235mm,フランジ幅30,50,100mmリップ長20mm板厚1.2mm冷間成型リップ付き溝形鋼で,曲げ材の単純支持支店間距離は3600mm曲げ区間の長さは1600mmとした.実験並びに曲げ材の耐力評価から以下のような結果を得た.(1)破壊形式は,終局状態においては,いずれの試験体も局部座屈とゆがみ座屈の連成した形状を呈するが,ゆがみ座屈はフランジ-リップにゆがみ座屈とフランジ-ウェブゆがみ座屈に大別された.(2)試験体の最大耐力は,現行のスチールハウス設計指針による評価では過度に安全側となる場合が多く,今後このような断面のゆがみ座屈耐力の評価方法の検討が必要である.
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