鉄骨ラーメン構造の梁継手に鉛ダンパーを組み込むことにより、梁の塑性変形能力に期待することなく地震入力エネルギーの大部分をダンパーで吸収する構造手法を確立するための第一段階として、平成13年度では鉛ダンパーの必要性能を数値解析を通して求め、縮小モデルを用いたダンパー単体の性能確認実験を行った。主な成果を要約すると次の通りである。 1 鉄骨ラーメン構造の梁継手に組み込まれた鉛ダンパーの必要性能は、梁フランジ降伏耐力の8割程度の抵抗力を有し、梁の地震時蝦大回転角と梁せいから算出される最大変形量に基づいて定められる。 2 性能確認実験の第一段階では、鉛塊に挿入する抵抗板(キープレート)の厚みを10、20、30mmに設定し、キープレートの厚みに対応して初期最大抵抗力が100kN〜300kNとなる鉛ダンパーを合計9体製作し、加振振動数を0.5Hz〜2.0Hz、変位振幅が5mm〜50mmの範囲で正弦波加振して性能を調査した。実験結果から、(1)キープレートの厚みに応じて、ダンパーは定変位振幅加振下で抵抗力が30kN〜130kN一定の矩形の履歴特性を有すること、(2)抵抗力と設定変位振幅にはほぼ比例関係が成立すること、(3)抵抗力は載荷速度に大きく依存しないこと、(4)ダンパーの温度上昇はせいぜい60゜程度であること、などの基本性能が確認できた、しかし、キープレートの厚さを30mmとして初期最大抵抗力を300kNとした試験体では、漸増変位繰返し加力下で鉛の漏出があり、その後、定常変位振幅加振下で一定の抵抗力を発揮するため、更なる装置の改良が望ましいという結論に達した。 3 実験の第二段階では、この鉛の漏れを完全に防止するために特殊な工夫を施した試験体による動的加振実験を行い、ダンパー内の鉛の流動性状について詳細に調べた。 4 現時点では第一段階及び第一段階の実験結果に基づき、多数回の繰返し加力下で安定した履歴性能を発瞳できるよう改良が施されたダンパーの設計を行っており、再度、性能確認の為の実験を実施する予定である。
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