鉄骨ラーメン構造の梁継手に鉛ダンパーを組み込むことによって、梁の塑性変形能力に期待することなく地震入力エネルギーの大部分をダンパーで吸収する構造手法を確立するため、平成14年度は、鉛材を封入したダンパーを、柱梁で構成される一般的なラーメン構造の部分骨組に組み込んだ実大試験体を製作し、動的アクチュエータを用いて、静的載荷実験並びに正弦波加振の動的載荷実験を行った。静的載荷実験では、アクチュエータによって正負漸増変位を試験体に与えて、ダンパー及び骨組の基本的な応答性状を調べた。動的載荷実験においては、正弦波加振振動数と設定変位振幅をパラメータとし、ダンパー抵抗力の振動数依存性や変位振幅依存性について調べた。得られた結果を要約すると、以下の通りである。 1 鉛材を封入したダンパーの抵抗力は、2Hz程度までの加振振動数の違いに影響されず、また、ダンパーの変位振幅が6cm程度までであれば過去の変位履歴の影響を受けずに安定した値を示すことを確認した。 2 このことから、本研究の目的の一つである地震後の補修を必要とせず、再利用可能なダンパーとして、鉛ダンパーを適用できることが明らかとなった。 3 しかし、建築物の応答を抑制するためには、ダンパーの抵抗力を更に大きくする必要があること、また、未経験の変位を受ける際には抵抗力が急増するという、復元力特性におけるピンチング現象が観察されることなど、実用化に向けて今後解決すべき課題も明らかになった。
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