研究課題
本研究は、東北アジア地域(中国東北部・韓半島・極東ロシア)における近代以降の都市空間の形成を歴史的な観点から明らかにするものである。2002年度においては、中国東北部の大連・瀋陽・長春・ハルビンを対象とした。2002年8月23日から9月12日にかけて、現地学術機関・行政機関などにおいて、関連する研究者に協力を受けながら、現地調査を行った。東北アジアの都市形成を捉えるためには、近代初期から欧米列国と日本の覇権争いの場となった都市空間の形成主体を理解することが欠かせない。したがって今年度は、中国東北地方における帝政ロシアと日本による都市形成過程を多様な主体関係の変遷を追いながら調査・分析した。中国東北部の大連・瀋陽・長春・ハルビンの旧市街地地区を中心に、市街を構成するいくつかの地区を「人・モノ・情報」の交流の視点で動向を調査・分析し把握した。ここでは、(1)大連・ハルビンの初期都市計画の対象となった東清鉄道附属地、(2)日露戦争以降、大連・瀋陽・長春の新たな都市建設が始まる満鉄附属地、(3)附属地の周辺に自然発生的に形成された中国人街を中心に、土地・建物所有に関する資料をもとに、街区形態の形成・再編過程を明らかにした。その結果、中国東北地方の植民都市の建設方法には施政者の影響が強く、施政者によって大きく2つに分類された。今後の展望環日本海地域の空間形成における多様性を描く上で二つの方向性が必要とされる。一つは関連する主体の多様性をより詳細に把握すること、もう一つは各主体の捉える空間形成の視点を検証する、という方向である。今年度までは環日本海研究の新たな視点を捉えるため、主に文献及び現地実地調査に尽力した。来年度からは今年度に収穫したデータをもととし対象地の都市空間要素を細分化して分析を行い、環日本海圏の空間要素を検証する。
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