研究概要 |
今年度は都電荒川線をケーススタディとして取り上げ、速度と注視分布の関係について研究を進めた。 まず、早稲田から三ノ輪橋へ向かう都電荒川線の車窓景観をデジタルビデオカメラにより撮影して得た車窓映像データーを実験用に編集し、アイマークレコーダーを装着した被験者に標準速度と2倍速度の映像を見せる被験者実験を行った。次に、実験で得られた全被験者のアイマークデータを解析プログラムにより注視角度座標(X, Y)(deg)として1秒間隔で入力し、車窓注視データとし、この車窓注視データを用いて注視分布、注視範囲の分析を行った。 はじめに、速度の差異による時系列方向での注視点のばらつきを比較するために、各被験者の注視座標(X, Y)データを標準化し、基本統計量を求めた。その結果、X軸方向については、全般的に標準速度の方が倍速度よりも信頼区間の値が大きいことが明らかになった。また倍速度になるとX軸方向の注視点のばらつきの範囲が小さくなることが明らかになった。 次に、速度変化による注視行動特性を見るために、「加速、等速、減速」の区分別による注視角度の変化を求めた。その結果、加速時において注視点は、始めは進行方向に対して負の向きへ移動するが、しだいに進行方向に対して正の向きへ大きく移行することが明らかになった。また、等速になると注視点は画面中心付近に停留し、減速時には再び進行方向に対して負の向きに移動するという特性を明らかにした。 一方、Y軸方向については、X軸と同様な変化特性を示すことを確認した。 さらに、注視停留分布から、倍速度になるとX軸正方向に注視点が移動し、かつ分布の幅が小さくなりること、Y軸方向においても分布の幅が小さくなっていることを明らかにした。
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