研究課題/領域番号 |
13450258
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
曽田 一雄 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70154705)
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研究分担者 |
柚原 淳司 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (10273294)
加藤 政彦 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (70222429)
八木 伸也 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (20284226)
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キーワード | 鉄基ホイスラー型合金 / 熱電特性 / 擬ギャップ電子状態 / 光電子分光 / 逆光電子分光 |
研究概要 |
本研究の目的は、フェルミ準位を挟んで鋭い擬ギャップを持つと理論的に予測され,特異な電気伝導現象と大きな熱起電力を示すことが最近報告されたホイスラー型Fe_2VAl系金属間化合物について、光電子分光と逆光電子分光を併用してその占有・非占有電子状態を共に測定し、この物質の電気伝導機構に関わるフェルミ準位近傍の電子状態と熱電特性の関係を実験的に明らかにすることである。これにより、この合金系が示す特異な電気伝導現象の発現機構を解明し、熱電特性向上のための新しい指針を確立する。 本年度は、既存の光電子分光装置に組み込んで非占有電子状態を調べる逆光電子分光装置を作製するとともに、Fe_2VAl合金とその化学量論的組成から僅かにずれた(Fe_<2/3>V<1/3>)_<100-y>Al_y合金の光電子分光測定を行い、代表的なAl組成yにおける占有電子構造を調べた。その結果、Fe_2VAl合金の光電子スペクトルは、0.1eV程度の全体的なシフトを除き、理論状態密度の被占有部分と非常によく一致し、擬ギャップが存在することを初めて明らかにした。また,Al組成を化学量論的組成から僅かにずらすと、価電子帯の主dバンドがrigid band的にシフトするとともに、フェルミ準位の光電子強度が増大した。これは、擬ギャップの存在と擬ギャップとフェルミ準位の位置関係がこの合金系の熱起電力の大きさと符号に関与していることを初めて実験的に示したものである。 これらは占有電子状態についての結果である。また、組成のずれは僅かではあるが、rigid bandでは説明されないバンド形状の変化や定量的な不一致が認められる。このような電子状態の変化は、理論的予測が難しい。この合金系における顕著な熱電特性の発現機構を理解するためには、占有電子状態だけでなく、非占有電子状態の実験的な情報が必要不可欠である。次年度は、逆光電子分光によりこれを明らかにする。
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