研究概要 |
新しい機能性セラミックスの開発研究として、特異な結晶構造を有し電気的磁気的あるいは光学的性質等の報告がほとんどなされていない多成分系ナイトライドに注目して研究を展開する中で、本年度はLi_3N-Mg_3N_2三成分系で新規窒化物である(Li_xMg_<1-x>)_3N_<2-x>(0<x<0.2),LiMgNと(Li_xMg_<1-x>)_2N_<(2-x)>_<2/3>(0.5<x<0.6)の3相の合成に成功した。 Ar雰囲気のグローブボックス内で試料の秤量、調合、ペレット成形などの作業を行った。出発原料のLi_3Nは金属リチウムを375-475Kで、またMg_3N_2は金属マグネシウムを825-890KでN_2ガスと反応させることにより合成した。これらLi_3NとMg_3N_2を種々の割合で混合し、ペレット成形したものをモリブデン製ボートに入れ、ステンレスチューブ内に納めた。グローブボックスから取り出した後、真空ラインに接続してArガスを排気後N_2ガスを充填し、電気炉にて900-1000Kで20-40時間加熱し、固相反応法により試料を合成した。得られた試料は、本研究費で購入したX線発生装置を用い、X線回折像の測定を行なった。未知構造のX線回折像は、ITO法で指数付けし、リートベルト法で結晶構造の精密化を行なった。 (Li_xMg_<1-x>)_3N_<2-x>(0<x<0.2)のX線回折ピークは体心立方格子で指数付けすることが出来た。格子定数の値はa=9.9767(5)A^^゜で空間群Ia-3であり、Li原子は格子間位置でなく、Mg_3N_2のMgが入る2つの24cサイトのうちの一方を優先的に置換する傾向が見られ、占有率の精密化から窒素欠損が示唆された。LiMgNはLiとMg原子が不規則配列した逆蛍石型構造とは異なり、斜方晶系a=7.1586(2),b=3.50691(8),c=5.01424(3)A^^゜,空間群PnmaでLiCaNと同型構造であることが判明した。(Li_xMg_<1-x>)_2N_<(2-x)>_<2/3>は急冷相として得られ、除冷するとLiMgNとLi_3Nに分解した。結晶構造は不規則配列の逆蛍石型構造(空間群Fm-3m,a=4.99559(1)A^^゜,x=0.57)であると考えられる。 今後は多種元素を組み合わせた多成分系の合成を行なう。
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