研究概要 |
物質系を拡張し、新しい機能性セラミックス素材を探索する研究として、本研究では窒素ガス雰囲下反応焼結法によるLi-Mg-M-N(M=Ni, Fe)系の多成分系ナイトライドの合成と電気的性質の評価を行った。 Li_3N、Mg_3N_2、Fe_3NとNiの粉末をAr雰囲気グローブボックス内で秤量し、メノウ乳針で混合後圧粉成形した。成形体をMoボートに入れ、ステンレススチール製反応容量内に置き、N_2ガスを導入後電気炉で833Kと1000Kで12〜36時間加熱し試料合成を行った。得られた試料の結晶相を粉末X線回析法で同定し、結晶構造をリートベルト解析で調べた。直流4端子法で10K-300Kの電気抵抗率を測定し、スクイド法で10K-300Kの帯磁率を測定した。 (Li_<1-x>Ni_x)_3N固溶体では、Ni固溶量x(x≦0.25)増加に伴いa軸は増加し、c軸は減少した。Li_3Nはイオン導電体であるが、x=0.25では金属的電気伝導を示し、最大エントロピー法で算出したNiの電子雲の重なりが電気的性質に反映していると考えられた。Li-Fe-N系ではモル比がLi : Fe=7:1の組成で新規窒化物の単相が得られた。化学組成はLi_7FeN_<3.75>で結晶構造は立方晶系に属し、空間群I-43m、格子定数a=9.782Åの逆蛍石型に関連した超格子構造であることが判明した。この結晶構造においては、一つのLiを中心に、他のLiとFe-N平面3配位が正4面体の頂点および面を構成する[Fe-N-(Li, Li)]^<x->のクラスターと、[N-(Li, Li]の配位多面体[Li_8^+N^3]^<5+>クラスターの組み合わせで構造が記述できる特異な結晶構造であり、T_N=40Kの反強磁性を示した。 1000Kと833Kの合成温度条件では、Li-Mg-Ni-N系とLi-Mg-Fe-N系においては3成分4元系窒化物の合成には至らなかった。3成分4元系窒化物の創製には合成条件の更なる検討が必要であると思われる。
|