本研究課題では、『可視光』で『ホトクロミズム』を示し『光誘起構造変化』をする酸化物系の探索手法を確立することを目的としている。特に励起波長を自由に選択でき、かつ結晶構造に応じて特定のパターンのスペクトルを与える『ラマン分光』を積極的に導入した。ある特定のエネルギーの可視光でホトクロミズムを示し構造変化をする酸化物は、ラマンスペクトルのパターン変化として現れるので、無限に存在すると言える夥しい種類の酸化物の中から候補物質を効率的に絞り込むことが出来る。そこで、波長363nmの近紫外光から波長400-850nm領域の様々なエネルギーの可視光をラマン分光の励起光源として用いた分光システムを構築し、これらレーザー光をホトクロミズムや構造変化を誘起させる引き金として用いるだけでなく、電子・格子構造の変化を直接ラマン分光学的にその場観察する手法の検討を行った。このシステムの有効性を検証するために、申請者等研究グループが発見した酸素欠損Y系高温超伝導体をモデル化合物として、波長可変ラマン分光装置を用いて可視光誘起構造変化のその場観察を実施した。同一システムを用い、多くの遷移金属酸化物について様々な可視光領域のレーザーを励起光源としたラマン分光実験を実施した。その中で、可視光領域にバンドギャップを持つバナジウム系酸化物は、バンドギャップに対応するエネルギーの可視光を照射すると青色に着色することを見出し、この着色現象が明確なエネルギー閾値を持つことから、可視光ホトクロミズであることを実証した。
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