研究課題/領域番号 |
13450264
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
垣花 眞人 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教授 (50233664)
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研究分担者 |
佐々木 聡 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 教授 (10162364)
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キーワード | 可視光 / ホトクロミズム / 光誘起構造変化 / ラマン分光 / 共鳴ラマン分光 / 酸化物 |
研究概要 |
本研究課題では、高エネルギーで不可視であり人体に害を及ぼす紫外光ではなく可視光照射下でホトクロミズム現象を示す無機酸化物あるいは可視光によって構造変化が誘起される無機酸化物の探索手法を確立することを目的とする。特に励起波長を自由に選択できるラマン分光の特質に着目し、様々な可視光領域のレーザーを、ホトクロミズムや構造変化を誘起させる引き金として用いるだけでなく、同時にラマンスペクトルの励起光源として用い、電子構造や結晶構造の変化を直接その場観察する手法の基盤を確立した。平成15年度には以下のような研究実績を得た。 (1)5酸化2バナジウム(V_2O_5)における可視光ホトクロミズムの観測 V_2O_5のバンドギャップ(2.15eV付近)以上の光、例えば515nmの波長を持つ緑色のレーザーをV_2O_5のペレットに照射することにより観測される着色(濃青色)は400℃の加熱処理で脱色した。この着色-脱色は何回繰り返しても実現できることが明らかになり、V_2O_5における可視光ホトクロミズムを強く示唆するものとなった。 (2)蛍光測定によるV2O5の可視光ホトクロミズムの可逆性の評価 V_2O_5に515nmの光を照射した直線において約680nmに最大ピークを持つ蛍光スペクトルが観測された。この蛍光スペクトルの強度は515nm光照射時間と共に減少していくことが明らかになった。1回のレーザー照射時間を10分間に固定し、10分間の室温放置をはさみ再照射した場合と、10分間400℃での加熱をはさんで照射した場合とを比較したところ、前者では蛍光強度はほとんど回復しなかったのに対して後者では蛍光強度は元に戻った。繰り返し再現性に優れていることも明らかになった。これによりV_2O_5の可視光ホトクロミズムが良好な可逆性をもつことがわかった。
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