平成13年度は、主に本研究で目的とするバリスタ薄膜の合成法の確立および物性発現の確認を中心に検討を行った。ここでは、還元再酸化型SrTiO_3バリスタのモデル界面:絶縁層-半導体層-絶縁層の積層構造を模倣した積層膜の作製を試み、実際にはSrTiO_3-NbドープSrTiO_3-SrTiO_3という積層構造を有する薄膜の作製を化学溶液法により行った。まず、原料として用いる金属アルコキシド及び溶媒の選択、溶液へ添加する安定化剤など、均一かつ安定な薄膜作製用前駆体溶液を調製するための最適条件について検討し、溶液中での反応により得られた複合金属-有機化合物前駆体の構造解析も行った。次に、実際の電子デバイスへの応用を見据えた半導体素子用基板を主に基板として選択し、積層構造膜作製のためのコーティング条件・結晶化条件の検討を行った。前駆体溶液の濃度、コーティング方法、前駆体膜の加熱処理条件を最適化することにより、均質かつ膜厚および結晶化後の微構造を制御した目的とするSrTiO_3系積層構造膜を基板上に直接合成することに成功した。また、作製した積層構造膜について電流-電圧(I-V)特性の評価を行うことにより、このような積層構造膜によるバリスタ特性の発現についてはじめて明らかとした。さらに、バリスタ薄膜の特性を引き出すのに最適な電極材料の選択および作製に関する検討も行い、電極材料が発現するバリスタ特性に及ぼす影響も明らかにした。
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