研究概要 |
本年度は,(1)材料の強度特性,(2)表面酸化層と中間層との界面特性,(3)表面酸化層の自己再生機能,(4)自己修復機能について検討した。母材NiAl/Al_2O_3材料の強度は483〜548MPaであった。酸化処理材の強度は処理温度1250℃では661〜655MPaで,母材よりも178〜107MPa高くなった。この強度の増加分は表面酸化層に発生する圧縮応力の値とほぼ等しく,圧縮応力が強度の改善にも寄与することが明らかになった。しかしながら,処理温度を1400℃にすると強度は490MPaに低下した。強度が増加する場合は酸化層内部に破壊起点があるのに対して,強度が低下する場合は酸化層と中間層の界面付近に破壊起点が観察され,酸化処理温度が高いと界面密着性が低下した。表面酸化層の構造を処理温度1200〜1400℃で調べると,表面酸化層は厚み数μmの極めて薄い表面被膜とその内部の厚み20〜60μmの変質層からなることがわかった。酸化処理温度が低いと酸化生成物NiAl_2O_4による表面の被覆率は小さかったが,処理温度1400℃では被覆率が急激に増加した。この高温での速いNiAl_2O_4の拡散が表面層と中間層の界面で急激な応力勾配を引き起こして強度を低下させると考えられた。表面酸化層の自己再生機能については,作製した酸化処理材の表面変質層を研磨除去した後,再酸化して,強度と破壊靭性値が変化しないことを検証した。また,ビッカース法で人工欠陥を導入した材料をアルゴン中1250℃で熱処理しても強度は343MPaまでしか回復しないのに対して,大気中で熱処理して酸化層を形成した材料の強度は531MPaとなって母材強度をも上回ることを示し,微細組織の観察などから酸化生成物の速い拡散を利用した材料表面の微小欠陥の自己修復による強度の回復が可能であることを実証した。
|