研究概要 |
本研究は,油成分に対して非常に大きな収着能を持つ膨張化グラファイトに着目して,これに有機溶媒に溶解した金属錯体,液状有機珪素化合物,金属アルコキシド溶液などを収着したものを大気中低温で熱処理して前駆体とし,それらを不活性雰囲気中で熱処理することによりグラファイト複合材料およびナノサイズの金属炭化物微粒子を合成することを目的とした. (1)磁性材料,電磁波の吸収体,触媒などを目的とした複合材料の作製:Ni,Fe,Fe_3O_4などの微粒子を含む材料を合成することができた.特に鉄/グラファイト複合材料では,100nm以下の微粒子状に良く分散した鉄を30%以上含み,強磁性材料として興味ある物性ものが得られた. (2)耐高温酸化性炭素材料,高温導電材料,エネルギー蓄積材料などを目的とした,複合材料の作製:非常に薄いSi-C-O系皮膜で被覆されたナノ積層構造グラファイトを作製する方法を確立した.この材料は電気伝導性を持ち,大気中1000℃で20時間以上加熱しても酸化による減量は1%程度である.また,Mn_2O_3,MnO_2などの微粒子を含む複合材料を合成することができ,スーパーキャパシターへ応用できる可能性がある. (3)膨張化グラファイトのミクロ空隙を利用した,単一系および多成分系金属炭化物微粒子の合成:低分子量液状有機珪素化合物,金属アルコキシドなどを用い,数100nm以下の微粒子状β-SiC,ZrC,TiC, (Ti,Zr)Cなどを合成できるプロセスを開発した.このプロセスは他の金属種にも拡張することができ,安価な原料を用い,熱処理も簡単で,一工程で微粒子を製造できるという利点があり,工業的に実施できる可能性がある.
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