電界メッキ法によって形成した銅薄膜において真空中で加熱・冷却処理を行った際にボイドが形成され、デバイス信頼性の観点から問題となっている。本年度はボイド形成箇所の組織学的、結晶学的研究を行うとともに、応力解析を行った。組織観察は透過電子顕微鏡、走査電子顕微鏡を用いた。結晶方位解析はキクチ回折パターンをもとに行った。応力解析はMARCを用いた三次元有限解析法によって行った。メッキ薄膜には多くの双晶が観察され、加熱後には粒界、粒内ともにサブミクロンのボイドが形成されていた。TEMによる内部組織観察の結果、ボイドは双晶の角部において形成されていることが判明した。この部分の結晶方位解析を行い、変換された弾性定数を入れて弾性異方性を考慮した応力分布の計算を行ったところ、ボイド形成箇所には高い応力集中が見られた。また、ボイドが形成される双晶界面は{322}タイプの非整合双晶であった。以上の結果より、銅特有の高い弾性異方性による応力集中が空孔拡散の駆動力となり、{322}タイプの非整合双晶界面が高速拡散経路となってボイドが形成されることが明らかになった。
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