研究概要 |
超高速配線材料として利用される銅薄膜は、プロセス時の熱処理中にボイドが形成され、断線の原因となる。 本研究では、超高速LSIデバイスの基本構造をなすCu/Ta/SIO_2/Si多層薄膜試料においてボイド形成機構を調べた。SEM, TEMによる観察の結果、強い(111)配向膜ではボイド形成されるが、ランダム配向膜では形成されなかった。 また、ボイトは双晶角部や双晶が粒界や他の双晶と交差する部分において形成されていた。双晶とボイド形成の関係を理解するために、ボイド周辺部組織の結晶方位を電子線回析で解析し、その情報を3次元有限要素法に取り込んで応力解析を行った。その結果、銅は弾性異方性が強いために、双晶界面において弾性ひずみの不一致に起因した高い応力集中が発生することがわかった。ボイドはこの応力集中によって生じることが明らかになった。 また、配向性とボイド形成の関係を理解するために、電子線回析によって双晶界面方位を決定した。強い(111)配向を有する膜の双晶は非整合な{322}双晶界面となるため界面エネルギーが高く、応力集中下でボイド形成に至ることが判明した。これに対して、ランダム配向を有する膜の双晶は整合な{111}双晶であり、界面エネルギーが低く応力集中によってもボイド形成に至らないことが明らかになった。 さらに、膜厚を調整して熱処理を施すことによって(100)方位を有する巨大粒を成長させ、双晶を含まない膜ができることも明らかになった。この膜は、双晶を含まないためボイトは形成されなかった。ダマシン配線においては、配線上部の角部にスリット状のボイドが形成された。応力解析の結果、配線形状に起因したせん断応力集中によって部分的に剥離したことが原因であると考えられる。 このことから、銅とバリア層の密着強度を改善することによってスリット状ボイドの形成を防止することが可能であると考えられる。
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