研究概要 |
2重トンネル強磁性接合は,スピン依存共鳴トンネル効果の発現が理論上予見されている.本研究はこのような特性を示すスピン2重トンネル接合作製のための,基礎データの収集を目指して行った.トンネル接合の強磁性体および絶縁体は,ハーフメタルであるCo_2MnT(T=Ge, Si)と格子定数の近いSrF_2を選定した.また,新しいハーフメタルの材料として,CoCrFeAl合金について実験を行った.まず,SrF_2を酸化膜付きSi基板上に作製し,AFM(原子間力顕微鏡)を用いて表面粗さを測定した.その結果,SrF_2は,膜厚が100Å以下では表面粗さが40Å以上あり,絶縁体として最適でない結果が得られた.さらに作製法の検討を行う必要がある.次いで,ホイスラー合金Co_2MnT(T=Ge, Si)の作製を目指した.T=Geの場合,573Kの基板温度で,T=Siの場合は,673Kの基板温度でスパッタした場合,L2_1構造となることが明らかとなった.このホイスラー合金を電極とする強磁性トンネル接合の作製を試みた.この際,絶縁体は従来のAlの酸化物を用いて作製した.磁気抵抗比はほとんど得られなかった.この原因は,L2_1構造を得るために,基板温度を高温にしたため,表面荒さの増加が原因と考えられる.最後に,CoCrFeAlの作製を試みた.基板温度が室温の場合,B2構造が得られることが分かった.この合金を電極とする強磁性トンネル接合を作製した結果,室温で16%,5Kで26%の磁気抵抗比が得られた.フルホイスラー合金を用いた強磁性トンネル接合では,トンネル磁気抵抗効果をはじめて観測したものである.
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