超微細組織を有する材料を作製し組織の定量化と強化機構を検討し以下の結論を得た。 パーライト組織ではセメンタイト・フェライト間、ラメラコロニー間、ブロック間で階層的に不均一塑性変形が生じ、相応力、ラメラ応力、ブロック応力が発生し変形を支配する。これらに及ぼすセメンタイト体積率の影響と内部応力の発生を引張試験中のその場中性子回折により明らかにした。外力が1.6GPaのときに、フェライト母相中に埋め込まれたセメンタイトには5GPaに相当する弾性ひずみが生じる。種々な加工熱処理材について集合組織と残留応力を中性子回折で測定し、ひずみ1.4程度の伸線加工材においては残留相応力に起因する強度異方性が生れる。 結晶粒径3.6μmのフェライトーパーライト鋼の変形の特徴をその場中性子回折により明らかにした。粒径が1μm以下になるとセメンタイトはパーライト状態で存在できず粒状になり、ほとんど加工硬化を示さず均一伸びがみられない。そこで、圧縮変形も行い、塑性変形状態の表面起伏状況についてレーザー顕微鏡を用いて定量的に測定し、変形不均一性を検討した。 低炭素フェライト鋼に真ひずみ6を超える強伸線加工を与えると、結晶粒の大きさは数10nmになり連続再結晶を起こし、焼鈍すると粒成長のみが起きる。このような微細粒フェライト線材は1.4GPa以上の外力下でも線形弾性変形を示す。一方、過共析パーライト鋼に真ひずみ4までの種々な強伸線加工を施すとセメンタイトは分解する。伸線状態の引張変形その場中性子回折実験により、外力3.6GPaでも弾性変形を示し、高応力域の応力と格子面ひずみ(弾性ひずみ)の関係は線形のフックの式からはずれ非線形になること等を示した。
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