研究概要 |
平成13年度には,第1の研究として,純銅単結晶を用いて,せん断ひずみの減少に伴う転移組織の再配列を調べた.塑性ひずみ振幅一定の低サイクル疲労において,高ひずみ振幅疲労試験を行った後に低ひずみ振幅疲労試験に移行する第2段階の疲労試験を行い透過電子顕微鏡観察を行った結果,1段階目で形成された転位セル組織が2段階目でPSB(persistent slip band)組織へと可逆的に変化することを見い出した.これまでの研究では,低ひずみ振幅域から高ひずみ振幅域への移行の場合には転位組織変化が生じることは知られていたが,本研究において,この逆の場合にも転位組織が可逆的に変化することを明らかにした.第2の研究として,純銅単結晶を用いて,疲労試験によって形成された転位組織の熱的安定性を調べた.疲労試験終了後の純銅単結晶を焼鈍し,熱分析,硬度測定,透過電子顕微鏡観察,および電気抵抗測定によって回復過程を詳細に調べた.また,一方向圧延した純銅単結晶も同様に焼鈍し,回復過程を比較した.疲労試験によって導入された転位は通常の再結晶温度以上においても安定に存在し,疲労試験によって形成された転位組織が高温でも維持されることを明らかにした.そして,疲労試験した試料の塑性変形量が,一方向圧延した試料と同等であっても,回復・再結晶を起こしにくいと結論した.さらに,この実験結果は転位組織の蓄積エネルギーの観点から矛盾なく説明できることがわかった.第3の研究として,3003アルミニウム合金の定ひずみ振幅疲労試験と定応力振幅疲労試験における転位組織発達過程を比較し,両者の対応が転位組織図によって可能となり,組織の対応性が極めて良いことを明らかにした. 平成14年度には,研究例が少なく疲労転位組織の情報が乏しい純アルミニウム単結晶に注目し,種々の塑性ひずみ振幅域での転位組織発達過程を調べる予定である.
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