研究概要 |
平成14年度においては,これまでに研究例の少ない純アルミニウムの疲労挙動に注目し,単結晶を用いて研究を行った.アルミニウムの疲労変形では,繰り返し硬化曲線に疲労軟化のステージが現れることが知られており,fcc金属の中でも得意な疲労挙動をホすことが指摘されてきた.しかし,この疲労軟化の原因は明確とはなっていない.そこで,本研究では,交差すべり系の活動と疲労軟化との関連性に注目し,応力軸方位を系統的に変化させることにより活動可能なすべり系を変化させた実験を行った. 応力軸方位が[10 10 11],[1 1 2],[1 1 4]および[1 1 20]となるアルミニウム単結晶を塑性ひずみ制御疲労試験した結果,[10 10 11]と[1 1 2]方位では疲労軟化が現れなかったのに対し,[1 1 4]と[1 1 20]方位では顕著な疲労軟化が見られた.疲労軟化が見られた試料表面では,数100ミクロン間隔で変形の局在化した領域が観察できた.同一条件の試料を透過電子顕微鏡観察し,内部転位組織を調べた結果,変形の集中した領域でセル組織の発達が顕著であり,表面観察結果と矛盾のないことがわかった. 疲労軟化の現れた試料では,交差すべり系の活動が確認されたのに対し,軟化の見られない方位では,交差すべりの活動が生じてないことから,疲労軟化の原因が交差すべり系の活動による変形の局在化にあると結論できた.また,他のfcc金属に比べ交差すべりの活動が容易であることは,アルミニウムの積層欠陥エネルギーが大きいことからも理解できる. 平成14年度の研究では,純アルミニウムの疲労軟化の原因を究明し,応力-ひずみ応答,表面組織,および内部転位組織を相互に関連づけた考察が行えた.
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