研究概要 |
本研究は、高温構造用先進材料として新規のアルミニウム系セラミック粒子強化金属基複合材料(metal matrix composites, MMC)の開発を意図したものである。すなわち、従来の粒子強化MMCと分散強化合金では、大きく異なる粒径のセラミック粒子が、それぞれ異なる役割を持って機能している点に注目し、微細粒子(<1μm)と粗大粒子(〜10μm)の片方または双方を強化相としたMMCについて、高温における剛性およびクリープ抵抗に及ぼす粒子サイズの効果を調べ、それら粒子から成る新規の"ハイブリッド"粒子強化MMCの設計に資する情報を得ることを目的とした。そこで、まず、Al-Ti-B混合粉を原料とするTiB_2/Al MMCの反応合成ではサブミクロンオーダーのTiB_2微粒子がAlマトリックス中に"その場(in situ)^2"生成することに着眼し、そこで問題となっている中間生成物Al_3Tiが脆性有害相として残留する理由を解明すべく、反応過程の詳細を調べた。その結果、中間生成したAlB_2とAl_3Tiが、溶融Alの存在下では分解し、TiB_2とAlが生成すること(AlB_2+Al_3Ti→TiB_2+4Al)、したがってTiB_2/Al MMC二層組織を得るには原料組成xAl-Ti-2Bにx≧4なる制約があり、この臨界組成x=4は最大27.9vol.% TiB_2に対応することを明らかにした。次いで、微細なin situ生成粒子(<1μm)と粗大な'ex situ'生成粒子(〜10μm)の片方または双方を強化相とした三種類の20vol.% TiB_2/Al MMCの作製を試み、それらを同一のプロセス条件で作製することに成功した。これらのMMCについて、動的引張弾性率の温度依存性の測定およびクリープ試験を実施し、得られた結果を筆者らの平均場微視力学に基づく理論解析の結果と比較検討して、高温剛性およびクリープ抵抗に及ぼす粒子サイズの効果を明らかにした。以上により、"ハイブリッド"粒子強化によるMMCの設計と、その反応合成プロセスによる作製は、高温構造用MMCの新規技術として有望であることが分かった。
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