研究概要 |
ダイヤモンド薄膜の気相生成上の問題として,高い基体温度(800〜900℃)がある。これは,成長表面のsp^3混成軌道を維持するためにダングリングボンドを終端するH原子が,高温(700℃以上)でないと脱離しないためである。そこで,本研究では,低基体温度成長の実現のために,光励起反応を用いた原子の吸着・脱離過程について動的に測定し,得られた知見を基にH原子を低温脱離させる光誘起表面反応を実現することを目的とする。 本年度は,(100), (111)および(110)面の高圧合成Ib型単結晶を用いて,熱脱離および光励起脱離の測定を行うための,装置を設計製作した。本装置には, Nd : YAGレーザーを試料に0°から60°までの照射角で照射するための4種の入射窓,脱離種が0°から80°までの測定角で計測するためのXYZθ試料ステージ,ならびに,熱脱離スペクトルと光励起脱離スペクトルの両者を測定するためのtime-of-flight兼用四重極質量分析装置などが備わっている。これにより,脱離種の角度依存性を測定可能とし,脱離種の吸着時における結合角について考察することができる。また,(100), (111)の試料表面をDおよびO終端面とするためのD_2およびO_2ドース機構および,熱脱離スペクトル測定のための1400℃までの試料加熱機構なども備えている。 現在,作製した装置について,既存の熱脱離測定データを利用した,熱脱離質量スペクトルの測定を行い,装置性能のチェックを行っている。
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