研究概要 |
本研究では,ダイヤモンド表面を終端するH原子及びO原子に着目し,光励起反応を用いた原子の吸着・脱離過程について動的に測定することを目的とする。対象とする結晶面としては,ダイヤモンドのCVD生成における成長面である(111)面および(100)面,またはこれらの面から構成された多結晶面とする。 昨年度までに,光励起脱離種測定用超高真空装置を設計製作し,ダイヤモンド結晶の再構成表面から物理吸着種,およびH終端表面からのH_2,O終端面からのCO, CO_2等を対象として熱脱離質量スペクトルの測定を行ってきた。D原子およびO原子の終端構造は,超高真空下のD_2およびO_2の高温試料に対する吹付けまたは高温W管中で熱クラッキングを用いて,in-situな終端処理を行った。この結果と既存の熱脱離測定データとを比較して,装置性能のチェックを行うと同時に,光脱離測定を行うための結晶表面構造や脱離時の結晶温度について考察を行ってきた。 最終年度である本年度は,熱脱離測定により得られた知見を基に,ダイヤモンド結晶のH終端表面からのH_2,O終端面からのCO, CO_2等を対象として,現有のNd:YAGレーザー(基本波から4倍波までのパルスレーザー)を用いた光励起脱離スペクトルを測定した。物理吸着したH_2OやCOなどが十分に脱離可能な200℃まで試料を加熱・保持した後,波長及びエネルギー密度を変えてレーザーを照射した。基本波,2倍波,3倍波の場合には,いずれも脱離スペクトルが観測されなかったが,4倍波の場合には脱離スペクトルが観測された。この場合でも,表面の結合手の光反応による脱離ではなく,ダイヤモンドのバルク内の欠陥が4倍波の紫外線を吸収し,結晶全体が加熱して熱脱離がおこっているものと思われる。
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