蛋白質(アルブミン、γ-グロブリン、フィブリノーゲン、およびリゾチーム)を化学固定化したプローブチップを用いた原子間力顕微鏡によるフォースカーブ測定を、アルカンチオール自己組織化単分子瑛表面と、光イニファタグラフト重合法により作成したボリマーグラフト表面の各表面化について行い、それらの表面と蛋白質間に働く相互作用力の特性を解析した。一方、表面にジチオカルバミル基を導入したガラス上でのNIPAMのグラフト重合により、鎖長の異なるNIPAMグラフト重合表面を作成した。この表面の温度変化によるグラフト膜の厚さの変化を、原子力顕微鏡(AFM)によるフォースディスタンスカーブ測定およびグラフト-非グラフト領域の段差測定により調べた。また、丸棒状の高分子鋳型を皮下埋入させることによって形成される管状組織体の人工血管への応用について検討を行った。ナノレベルの極表層の化学組成を種々に変化させた高分子鋳型を作製し、これを兎皮下に埋入させ、組織体の形成とその構造に及ぼす表面化学組成依存性を調べた。表面グラフト化アクリル棒を兎皮下に埋入させると2週間後には撥水性表面基材を除く全ての表面修飾基材の周囲にカプセル状の管状組織体が形成された。組織体の壁厚は表面化学組成に依存し、平均50-150μmで変化した。各表面で管外径は約5-20%の範囲で伸張し、コンプライアンス(β値)は10-50の生理的範囲で変化した。ジチオカルバメートの光反応性を利用して高分子基材の表面組成をナノレベルで設計することで、生体反応を制御でき、理想的な人工血管の開発の可能性を示した。
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