ランタノイド二元系硫化物においては、硫黄の価数は常に2価であるが、ランタノイド元素(以下Ln)は最外殻軌道に4個の電子を供給できる。そのため、これらの原子の間にはLnS、Ln_2S_3、Ln_5S_7、Ln_3S_4、LnS_2組成の二元系硫化物が形成される。これらの中には、高清浄金属溶解用耐火材料や溶融塩電解用電極材料として有望なCeSや、ゼーベック係数が大きいことから熱電材料として有望なLa_2S_3やCe_2S_3も含まれている。 そこで、研究者らは、Ln_2S_3の熱電材料としての研究、また、比較的安全なCS_2ガスを用いたLn_2S_3単相の合成法の実験を行った。従来の研究では、La_2S_3粉末はH_2Sガスを用いた還元硫化反応により合成されていたが、本研究では、La_2O_3の硫化にCS_2ガスを用いた。CS_2はH_2Sより毒性が強くないために取り扱いが比較的容易で、硫化温度の低下と反応速度の促進が期待された。最初にLa_2S_3の反応率を反応生成物の質量変化とX線回折結果から求め、反応速度に及ぼす還元硫化温度、還元硫化時間の影響を調べ、La_2S_3の生成反応過程を調べた。その結果、La_2S_3単相は温度の上昇とともにα相、β相、γ相と変態し、β相とγ相との混合相粉末が驚異的なゼーベック係数を有することが分った。また、合成したLa_2S_3粉末のホットプレス焼結、さらにはLa_2S_3焼結体のゼーベック係数などの測定を行った結果、従来の化合物と比べて非常に大きいゼーベック係数を有することを見い出した。 今後、続いてランタノイド系二元系硫化物の優れた機能やその機能が発現する原因、さらには薄膜の合成法や常圧焼結法についても研究を進める予定である。
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