希土類カルコゲナイド二元系硫化物の創製と熱電変換特性

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13450304
• 研究機関: 室蘭工業大学
• 研究代表者: 嶋影 和宜 室蘭工業大学, 工学部, 教授 (70005346)
• 研究分担者: 平井 伸治 室蘭工業大学, 工学部, 教授 (10208796)
• キーワード: 希土類硫化物 / 創製 / 熱電変換材料 / 硫化反応 / ゼーベック係数 / ホットプレス / La_2S_3焼結体 / パワーファクター

研究概要

ランタナイド三二硫化物(Ln_2S_3)の中でもLaからNdまでの硫化物は、低温安定相である斜方晶のα相から、Ln_2S_3とLn_3S_4との間の固溶体またはLn_<10>S_<14>Oと考えられている正方晶のβ相、さらに高温安定相である立方晶Th_3P_4型のγ相てと不可逆変態することが確認されている。これらLn_2S_3は、粉末が大気中623K以下の温度であれば、紫外線の下でも退色しない鮮やかな色彩を示すことから顔料として用いられる可能性があり、また、特にγ相は半導体であり、大きなゼーベック係数を有することから高温域の熱電変換材料として期待されている。中でもγ-La_2S_3の熱電材料に関する研究が多くなされ、性能指数が1273Kの高温で0.75×10^<-3>K^<-1>Oに達することが報告されている。
本研究では、これまでのCeO_2, Pr_60_<11>, Nd_2O_3, Sm_2O_3を出発原料に用いたα-CeS_2, β-Pr_2S_3, β-Nd_2S_3, α-Sm_2S_3の合成に続いて、H_2Sガスを用いた従来の硫化法と比べて低い温度で単相のLa_2S_3の生成が期待されるCS_2ガス硫化法に着目し、La_2O_3のCS_2ガス硫化によるLa_2S_3の合成について検討した。さらに、La_2S_3合成粉末を用いて焼結体を作製し、その熱電特性に及ぼす合成粉末中の不純物濃度、焼結体への各種金属添加の効果、焼結温度、焼結圧力などの焼結条件の影響について検討した。これらの検討事項に基づいて、γ-La_2S_3単相の相制御の条件を見出した。今後はゼーベック係数などの熱電特性について評価する。
さらに、本年度は、Eu_2O_3およびYb_2O_3のCS_2ガス硫化による硫化物の合成実験を行い、合成硫化物の熱電特性についても調査を行い、その成果は3月に開催される各種学会に発表された。

研究成果

• [文献書誌] Shinji Hirai, Kazuyoshi Simakgae, et al.: "Synthesis and Sintering of Cerium (II) Monosulfide"Journal of American Ceramic Society. Vol.87、No1. 23-28 (2004)
• [文献書誌] Shinji Hirai, Kazuyoshi Shimakgae, et al.: "Preparation of R_2S_3 (Ln : La,Pr,Nd,Sm) Powders by Sulfurization of Oxide Powders Using CS_2 Gas"Journal of Alloy and Ccmpound. (In Press). (2004)
• [文献書誌] Michihiro Ohta, Shinji Hirai, Kazuyoshi Shimakgae, et al.: "Preparation of R_2S_3(Ln : La,Pr,Nd,Sm) Powders by Sulfurization of Oxide Powders Using CS_2 Gas"Proceedings of Fifth International Conference on f-Elements, Geneva, Switzerland. 24-29 (2003)
• [文献書誌] 平井伸治, 嶋影和宜: "希土類カルコゲナイド硫化物のエネルギー材料への新展開"独立行政法人 日本学術振興会、素材プロセッシング第69委員会. 第56回. 37-42 (2003)
• [文献書誌] 大田道弘, 平井伸治, 嶋影和宜: "ランタン三二硫化物粉末の合成と焼結および電気物性"独立行政法人 日本学術振興会、素材プロセッシング第69委員会. 第57回. 52-60 (2003)
• [文献書誌] 平井伸治, 嶋影和宜, その他: "CS_2ガス硫化反応によるγ-Pr_2S_3およびγ-Nd_2S_3の合成と焼結"日本金属学会誌. 第67巻、6号. 15-21 (2003)