昨年度まで、La2S3焼結体は、常温付近で大きなゼーベック係数(S)を有することを見出し、さらに、Pdを添加した焼結体は電気抵抗率(ρ)が減少し、パワーファクター(P=S2/ρ)も増加することを明らかにした。 そこで、本年度は、ゼーベック係数やパワーファクターの増加と組成との関係を明らかにする目的で、合成粉末中の不純物濃度、各種金属添加による影響および焼結条件等の因子の影響について検討した。 合成した低酸素濃度の三二硫化ランタン焼結体と市販されている高酸素濃度の三二硫化ランタン焼結体を用いて、酸素による不純物濃度の影響について調べた結果、低酸素濃度の三二硫化ランタン焼結体では、1773Kではβ相、γ混合相、1973Kではγ単相が認められたが、高酸素の三二硫化ランタン焼結体では、1773Kではβ相、1973Kでもβ相の残存が確認された。これらの焼結体のパワーファクターは、絶縁的な挙動を示したβ相に対して、γ相の生成と共に電気抵抗率が減少し、γ単相では1.32×10-4W・m-1・K-2まで増加した。 次に、市販の高酸素濃度の三二硫化ランタン焼結体を用いて、各種金属添加剤の焼結体相組成の効果について調べた結果、1773Kでβ相、γ相の混合相が生成し、金属Ti添加量を増大させると、γのX線回折強度が増大し、8mass%以上ではβ相が消失し、γ相とLaS硫化物が生成した。これらの熱電変換特性は、Ti添加量の増大とともにゼーベック係数が増大し、電気抵抗率が減少し、8mass%Ti添加におけるパワーファクターは2.2×10-4W・m-1・K-2まで増加した。また、8mass%Ti添加してホットプレス焼結を行った場合、LaS硫化物の生成量の増加と、電気抵抗率の減少によりパワーファクターが3.4×10-4W・m-1・K-2まで増加した。これは電気伝導性に優れた金属結合を有するLaS硫化物が生成したためと推定した。 更に、市販の高酸素濃度の三二硫化ランタン焼結体を用いて、冷間圧延時の加圧力を変化させ、圧粉体の圧力の効果を調べた結果、加圧力の増加にしたがって、電気抵抗率が減少した。特に、熱電変換特性の温度依存性から高温ほどパワーファクターが増大し、673Kの高温におけるパワーファクターは1.6×10-4W・m-1・K-2に達した。 したがって、三二硫化物焼結体は高温用熱電変換材料として有用であることを確認した。 さらに、本年度はLa2S3の合成の他に、各種希土類硫化物の合成を行い、Eu2S3およびY2S3硫化物の合成を行い、その熱電変換特性についても調査し、名種学会で公表した。
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