研究概要 |
前年度に引きつづきアルミナ単結晶を用いて添加元素のプロトン導電体特性に与える効果について調べた。プロトンを導入するための2価のドーパントにはMgが優れていることが作年度の研究で確かめられたが、Mg以外のドーパントの効果も引き続いて調べた。Crを添加した場合には高水素分圧下で酸化物イオン電導が認められた。Tiをドープした場合には高水素分圧下でプロトン電導が認められ、水素の存在位置を調べたところ、Mgドープの場合と同じ酸素-酸素間に存在することが分かった。Ni、Coをドープした場合にもプロトンが導入されことが認められた。Coドープの場合には高酸素雰囲気で3価の形で溶解し、高水素雰囲気で2価に還元されると同時に水素炉侵入型プロトンで導入されることが明らかになった。 Mgをドープした試料について単結晶の熱衝撃特性の向上をめざして第三元素の添加を試みた。Cr, B, Ti, Sm, Nd, La, Ce等の添加を試みたが、Sm添加によって単結晶に生じる亀裂が若干抑えられる効果が認められた。 このようにアルミナをベースとするプロトン導電体の特性が明らかとなったので、市販の多結晶焼結体(実際には焼結助剤として過飽和のMgを含む)を固体電解質とした濃淡電池型の水素センサーの特性について調べた。両極をガスとした場合には良好な水素センサーとして利用できることを確認した。またその起電力はSchmarzlied型の式で良く表され、式内に含まれる電導のパラメータを温度の関数として求めた。 さらに溶融金属に浸漬するタイプのセンサーとしての利用を考え、電極を液体銅として水素濃淡電池の特性を調べた。その結果1250℃以上の高温で長時間用いると、Cuがアルミナと反応し、プロトン導電体としての特性が劣化すること観察され、銅用の浸漬型のセンサーとしては短時間で使用する消耗型タイプが望ましいことが分かった。
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