研究概要 |
金属と不活性粒子とを共析させる複合電析は,金属および不活性粒子単独では得られない物性や機能を付加することの出来るプロセスである。複合電析のマイクロマシン作製技術への応用を考えた場合,ナノメートルサイズの粒子が均一に分散していることが望まれるが,粒子サイズの減少にともない共析量の減少,凝集粒子の共析などの問題が生じ,ナノメートルサイズの粒子の複合電析は困難である。 昨年までの研究で,水を含まないジメチルスルホン浴を使用し,水溶液からは分散性良く共析させることが困難なサブミクロンサイズのSiO_2微粒子やAl_2O_3微粒子のみならずナノメートルオーダーのTiO_2粒子も分散性良く共析したアルミニウム複合めっき膜の電析に成功した。本年度は,ナノメートルオーダーのTiO_2粒子を含有するAl-TiO_2複合電析を行い,水溶液から得られるNi-TiO_2電析物と比較した。Al-TiO_2電析物はNi-TiO_2電析物に数倍以上のTiO_2を含有し,またTiO_2は面内,厚さ方向とも均一に析出していた。一方Ni-TiO_2電析物では,基板-電析物界面および電析物表面にTiO_2の偏析が認められた。他だし,電析膜の光触媒活性を評価したところ,Al-TiO_2電析物とNi-TiO_2電析物で顕著な差は認められなかった。また,Al-Mn合金電析についても検討したところ,光沢のあるAl-Mnアモルファス合金の析出が認められた。 新規な溶媒として,脂肪族四級アンモニウムイミド型イオン性液体を開発し,Zn-Mg合金電析に関して,イオン性液体の水分含有量の影響について検討した。その結果,水分含有量が950ppmと多い電解浴から得られた電析物にはZnとMgの共析は認められたもの,X線回折およびAES分析からZn, Mgともに酸化物として析出しているものと推察された。脱水処理を施し水分含有量を87ppmまで減少させた電解液から電析を行ったところ,金属Znの析出が認められたものの,Mgの含有量は減少し,また金属Mgの析出は認められなかった。本研究で用いたイオン性液体はフッ素を含有し疎水性であるとされているが,わずかな水分含有量が電析物に影響することが明らかになった。
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