本研究の二年度(最終年度)目にあたる平成14年度においては、前年度に引き続き、重金属含有廃棄物として都市ごみ焼却飛灰および溶融飛灰を選択し、これに対する粉末硫黄による固-固反応系重金属硫化物化の検討を行った。前年度において、飛灰を硫黄と水酸化ナトリウムと共に403Kで融解したアスファルト中で加熱混練することにより、硫黄と水酸化ナトリウムが反応して生成する硫化ナトリウムによって飛灰中の鉛、銅などの重金属化合物が硫化物化し、不溶化することが明らかとなっている。本年度では、水酸化ナトリウムに代わって飛灰中に含まれている水酸化カルシウムの硫化助剤としての利用、固化材としての廃プラスチック利用の2項目について検討を行った。 重金属の硫化物化に必要なアルカリ成分(硫化助剤)として、水酸化カルシウムの適用性について検討した結果、493K以上では硫黄と水酸化カルシウムが反応し、重金属を硫化物化し得る硫化カルシウムを生成することが明らかとなった。実際に、水酸化カルシウムを含有する飛灰をアスファルトと硫黄と共に523Kで混練したところ、アスファルトのみの混練処理に比べ、鉛の溶出量が大きく減少した。しかしながら、飛灰中に含まれる水酸化カルシウムのみでの硫化反応による鉛の溶出抑制では、いずれの飛灰も埋立基準値(0.3mg/l)満たすことができなかったため、硫黄を加えるとともに新たに水酸化カルシウムの添加を試みたところ、処理飛灰からの鉛の溶出量は全て埋立基準値を十分満たした。 廃プラスチックの硫化物化媒体/固化材としての有効性を検討するために、廃プラスチックの硫黄と水酸化カルシウム、飛灰との523Kでの加熱混練による処理飛灰からの鉛の溶出特性を調べた結果、処理後飛灰からの鉛の溶出量は埋立基準値(0.3mg/l)を満たすことが明らかとなった。
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