本研究では、廃棄物の焼却過程から排出される飛灰中の重金属に対して、硫黄、アスファルトなどとの飛灰の加熱混練による重金属硫化物固定化法を開発した。 飛灰中に含有した有害重金属は塩化物・酸化物といった環境中に拡散・排出(溶出)しやすい化合物形態をとっている。そこで本申請では、元来、多くの重金属が他の化合物に比べて極めて溶解度の低い硫化鉱として地球上に存在していること、およびアスファルトが撥水効果を有していることに着目し、アスファルト、硫黄、アルカリ剤(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム)の加熱混練による飛灰中重金属の化学的・物理的同時固定化法を提案した。 硫黄と飛灰中に含まれる各種重金属化合物の硫化反応の条件について、熱力学的検討および試薬を用いた加熱混合実験により得られたサンプルをXRD分析した結果、飛灰中に多く含まれる易溶性の塩化鉛などの重金属は、硫黄のみとは反応せず、硫黄と水酸化ナトリウムなどのアルカリ成分の共存下において硫化物化することが明らかとなった。したがって、本研究では、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カルシウムをアルカリ成分として添加することで、硫黄との反応生成物である硫化ナトリウム、硫化カルシウムの2種類の硫化アルカリにより、飛灰中重金属を硫化物化した。具体的には、都市ごみ焼却飛灰を用いてアスファルトと共に混練した処理飛灰の溶出試験を行った結果、水酸化ナトリウムは403K、水酸化カルシウムについては523Kで混練処理した飛灰からの鉛およびその他の重金属の溶出は認められず、飛灰中重金属の固定化が可能であることが明らかとなった。
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