固体高分子型燃料電池(PEFC)は次世代型燃料電池の候補として、電極触媒、膜材料、燃料供給装置、システム開発など多くの要素技術が研究されつつある。分散系レオロジーの観点からPEFC技術を見てみると、特に電極膜のコーティングプロセスに問題がある。即ち、PEFCの電極はカーボンブラックを基体として触媒、撥水剤、イオン交換膜(電解質)溶液をカーボンブラック上に固めたガス拡散型の構造になっている。カーボンブラック微粒子は凝集性が強く、電極内の微粒子の分散が電池の性能に大きく影響を及ぼすこととなる。本研究では非球形微粒子を分散した凝集性スラリーに適用可能な微粒子分散レオロジーモデルを提案し、その有効性を確認した。更に、PEFC電極膜のコーテイングプロセスのマイクロコントロールを行い、電極性能を高める技術の研究開発を行った。 具体的にはPEFC用電極膜を作成し、その性能評価と共にナノ微粒子の薄膜内分散状態をSEM観察し、分散制御と電極性能の検討を行った。特に最終年度は非球形微粒子がせん断流れ場によって配向する現象を、ポリエチレングリコール中にオブラートタイプのグラファイト微粒子を分散させた系で観測した。電極性能に関しては、コーティング速度と電極性能の関係を明らかにし、実験範囲内ではコーテイング速度が速くなるほど、水素電極性能が良くなることを明らかにした。最適のコーティング速度の指針を得るべく、塗布スラリーの組成を変化させて実験を続行中である。非球形粒子のせん断流れ場における配向性は、せん断面およびそれに垂直な面における粒子の配向特性を定量的に把握した。 以上、総括として燃料電池の性能向上のための電極膜塗布技術の最適化に関する指針を実験範囲内で得た。性能向上に対する最終の最適条件は実験条件をもっと広範囲に展開する必要があり、今後の検討課題として残っている。せん断場における粒子の配向性についても、機能性膜の性能向上と結びつけた議論を今後行ってゆく計画である。
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