本研究期間中に、まず融液の流れを軸対称定常流とみなした総合解析コードを完成させ、気相内の対流拡散および融液表面のマランゴニ効果が果たす役割の重要性を明らかにした。さらに、縦磁場を印加することが、炉内の融液流れや酸素移動に及ぼす効果をも評価した。また、融液や気相中の熱物性の値が流れや酸素移動に及ぼす影響について定量的に評価した。シミュレーションの結果、小型Cz路における酸素移動プロセス中のもっとも大きな物質移動抵抗は、気相中のSiOの拡散過程であること、酸素移動は融液の流れや温度分布の影響も強く受けることを明らかにした。ガスガイドの設置により、気体をメルト表面に沿って流すことで気相側物質移動係数は増加するが、気相のせん断力によって融液の流れパターンが変化するため、必ずしも酸素移動速度は増加しないことも明らかにした。さらに、融液の表面張力の温度係数の値によって、融液の流れパターンが大きく変化することも示した。シリコン融液の表面張力の温度係数の値は、酸素分圧の影響も含めて今後詳細に測定する必要がある。なお、従来NECに設置されていた小型Cz炉を平成12年度に移設し実験を行う予定であったが、当該装置の移転が平成13年度にずれ込み、さらに平成13年度後半に応用力学研究所へ移転し、その後は酸化物単結晶育成実験に使用されたため、詳細な実験的研究は実施できなかった。 数値解析の結果の一部を実験結果と比較検討することしか出来なかったが、両者はほぼ定量的な一致を見ることができたことから、本研究で開発した総合シミュレーションコードの信頼性は確認されたと判断した。 研究成果は、シリコンCz炉の総合解析に関する5編の学術論文、シリコン融液の環状薄液層内のパターン形成に関する学術論文3編、として国際学術雑誌に報告した。また、国内外の講演会等において口頭発表も実施した。さらに、単結晶育成Cz炉内の流れの不安定性に関する総説を発表した。
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