本研究においては、代表的な合成ゼオライトであるLTA型(A型)およびFAU型(X型、Y型)を中心に、ゼオライトの結晶成長機構を原子レベルで検討し、更にこれに基づく合理的な合成プロセスを提案することを目的に検討を行った。 初年度は、希薄系を中心に検討を進め、液中の前駆体の検出と結晶生成過程の原子レベルでの解明を並行して行った。あらかじめ合成したファセットの発達したFAU、LTAを種結晶とし、80℃の希薄アルミノシリケート溶液に一定時間浸し、浸す前後の結晶表面の変化をAFMにより同一視野観察を行った。原料中のA1が多い場合、FAU上にはFAUが、LTA上にはLTAが成長することが確認できた。一方少ないときは、FAU上では成長と溶解もおきなかったが、LTA上ではLTAが成長することが確認できた。溶液をラマン分光により評価したところ、A1が少ないときには、四員環/六員環が大きくなる傾向が確認できた。以上の結果は、LTAの前駆体としては四員環を、FAUの前駆体としては六員環を想定すると合理的に説明できた。 第二年度は更に詳細に結晶成長過程の検討を進めた。結晶成長に関しては原子レベルでの表面構造観察を進めることにより、成長時の表面の微細構造を確定することに成功した。その詳細な検討から、LTAに関してはシングル四員環、FAUにシングル六員環を単位として成長が進行することを示すことに初めて成功した。更に成長時の溶存種を同定するために共同研究者のSankar博士と共同で検討を進め、Spring8の強力X線回折用ビームラインにおいて、ゲルの回折を測定した。現在解析を進めている段階であるが、LTAが成長しやすい場合と、FAUが成長しやすい場合とでは、溶存種に違いがあることが明らかとなった。
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