研究概要 |
地球規模・地域規模での様々な環境問題は、我々人類が早急に解決すべき最も重要な社会問題の一つである。環境問題対策において触媒の果たす役割は大きく、環境触媒の開発は環境調和型の省資源・省エネルギープロセスの実現、クリーンな環境の創生などに結びつくキーテクノロジーとして多様な展開が期待されている。一方で、研究代表者らは最近、計算化学にコンビナトリアルケミストリーの概念を導入した「コンビナトリアル計算化学」という新しい概念を提案し、実質的に役立つ計算化学による触媒材料の高速スクリーニングを実現してきた。さらに研究代表者らは、担体や助触媒を含む数百〜千原子という大規模計算に適した高速化量子分子動力学法プログラムColorsの開発に成功し、従来の第一原理量子分子動力学法に比較し5000倍の高速化を実現しつつ、かつ第一原理計算に匹敵する精度を維持することに成功した。本研究では上記Colorsプログラムを活用し、担体や助触媒を含む触媒材料の高速スクリーニングを実現することを目的とした。種々の酸化物担体(SiO_2,TiO_2,γ-Al_2O_3,ZrO_2)やゼオライト(BEA, MOR, MFI)に加え、実質上重要である希土類酸化物担体であるCeO_2についても、その構造や電子状態を第一原理計算および実験結果に精度よく一致させることに成功した。また各種担体上にPt等を担持させた大規模モデルの計算にも成功した。さらに、Fischer-Tropsh合成触媒であるFe触媒においてカーバイドの形成や水素分子との反応ダイナミクス、担体を考慮したより現実的かつ複雑な大規模モデルによる触媒反応ダイナミクスの解明にも成功した。
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