研究概要 |
1)好熱好酸性アーキアSulfolobus solfataricusが生産する呼吸鎖キノン,カルダリエラキノンは,炭素数30の飽和プレニル基を側鎖に持つことが知られていた.同菌のゲノム配列解析の結果をもとに,その側鎖の前駆体と考えられるヘキサプレニル二リン酸を合成するプレニル二リン酸合成酵素遺伝子を単離し,大腸菌での異種発現酵素を用いて性質決定を行った.その結果,同酵素は既知のバクテリア由来のヘテロダイマー型中鎖プレニル二リン酸合成酵素とは異なり,1種類のサブユニットで活性を示すホモマルチマー型酵素であることが分かった.さらに,様々なプレニル二リン酸合成酵素との配列比較にもとづく系統解析の結果,同酵素は他の中鎖・長鎖型酵素よりも真核生物由来の短鎖型酵素に近縁であるというきわめて興味深い知見が得られた.同酵素に対し,他種生物由来の酵素の配列を部位特異的に導入した変異実験の結果も,この系統解析から得られた仮説を支持するものであった. 2)Sulfolobus shibatae由来のイソペンテニル二リン酸イソメラーゼの遺伝子クローニングと大腸菌での異種発現に成功した.同酵素はアーキアのイソプレノイド脂質生合成の根幹を担う重要酵素である.同酵素は補酵素要求性などの面で既知酵素とは異なっており,また,酸化還元酵素との類似性が示唆されるなど,きわめて新奇性が高いことが明らかとなった. 3)好熱性アーキアからイソプレノイド生合成を触媒する種々の酵素遺伝子を単離し,大腸菌での発現によりその機能を証明することに成功した。それらは,例えばリコペンサイクラーゼのようにアーキア特有の構造を持つといった,それぞれ独特な性質を有しており,酵素分子の進化を探る上できわめて興味深い存在だと言える.
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