研究概要 |
遺伝子治療では遺伝子導入効率及びヒト染色体への遺伝子組込み効率の良さという観点からレトロウイルスの使用が一般的である。しかしレトルウイルスは元来発ガンウイルスであるためその潜在的危険性はいがめない。そこで安全なリピッドベシクル法を改良し、これにかわる方法とすることを目指している。リピッドベシクル法の欠点は外来DNAの染色体への組込みができないことであり、これは導入遺伝子の安定性及び後代への伝達という観点から問題が多い。この点を改良するためには、レトロウイルスの効率的な遺伝子の染色体への組込み機能を取り込むことが早道である。現在までに組込み酵素であるインテグラーゼをリピッドベシクルに導入し組込み効果を約15倍上昇させたがまだ不充分であり、レトロウイルスの他のタンパク、特にニュークレアキャプシッド(NC)タンパクの利用を考えた。そこで動物細胞でRSVのNCを発現するためのベクターを構築した。インテグラーゼ発現ベクター、レポーター遺伝子(両端に平滑の40bpのRSV,LTRを持つNeo^r遺伝子)と共にリポフェクション法によってCHO細胞に遺伝子導入した。しかしながらNCによるstable遺伝子導入効率のきわだった上昇は見られなかった。 RSVのNCタンパクを調製するために、His-tag融合型のベクターに組込み、大腸菌BL-21で誘導生産を行った。Niを用いたMetal Aftinity Resinでの精製により1stepで純度の高いNCが得られた。 NCタンパクとインテグラーゼタンパクを用い、レポーター遺伝子をstableに導入する効率が上昇するか検討した。実験によってはNCタンパクが約2倍効率を上げる結果が得られたが、実験結果が安定しなかった。原因として高濃度のNCタンパクはレポーター遺伝子を導入するためのカチオニックリポソームの作用を阻害すると考えた。NCタンパクの濃度条件を変え、カチオニックリポソームの効果を阻害しない条件を探し、検討する予定である。
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