研究概要 |
本研究では抗体のようにあらゆる抗原に結合でき、しかも酵素のようにその抗原(基質)を分解できる"夢のような分子"(いわゆる「スーパー抗体酵素」)を設計・作製し、これまでとは全く異った手法で悪性細菌や悪性ウイルスを叩く分子を創製するのが大きな目的である。そのために本年度は研究計画に従って以下に示す項目について検討を行った。 1)有力な抗体酵素には、これまでほとんどの場合、その軽鎖に、触媒三ツ組残基(Asp, His, Ser)様構造が存在しており、これがどれほど正しい考え方か検証を進めた。新しく作製したモノクローナル抗体の軽鎖について抗原ペプチド分解活性を測定したところ、触媒三ツ組残基を有すると推定された抗体軽鎖はやはり、酵素活性を示した。 2)どの様なクローンにこうした触媒三ツ組残基が現れやすいか究明する目的で検討を行った結果、多くの抗体には自然に軽鎖にこうした触媒三ツ組残基が現れやすくその確率は数十%程度であると推定された。一方、重鎖には触媒三ツ組残基が現れにくいことも判った。 3)バクテリアに対する「スーパー抗体酵素」が作製可能か実験を進める計画であったが、具体的にはHelicobacter pyloriウレアーゼに対する抗体を用いた。その結果、いくつかのクローンが有望な結果を与えた(未発表)。 4)Helicobacter pyloriウレアーゼの活性サイトを構成するアミノ酸配列を推定し、そのタンパク質を大腸菌で発現させた。これを精製後、抗原に用いてウレアーゼの最も重要な部位を標的にした抗体を作製した。
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