研究概要 |
平成13年度は、チオール基やジスルフィド結合を含む置換基で修飾されたピロールモノマーを合成し、それらモノマーを電気化学的に酸化重合することにより、新規含硫黄ポリピロール誘導体の作成を行った。合成したいずれのピロールモノマー誘導体の電気化学的酸化重合からもポリピロール誘導体薄膜が電極表面上に得られた。しかしながら、モノマーの電解重合および得られたポリピロール薄膜のレドックス特性は、モノマーに導入した含硫黄置換基に依存して大きく異なった。ピロールの3位に1つあるいは3および4位に2つのチオメチル基(-CH_2-SH)を導入したピロール誘導体の電解重合より得られたポリピロール誘導体薄膜は、未修飾のピロールモノマーより得られたポリピロール薄膜と比較して、レドックス電位は正側に大きくシフトしていたが、レドックス活性は低かった。特に2つのチオメチル基を導入したpoly(3, 4-dithiomethylpyrrole)薄膜のレドックス活性は非常に低かった。この原因として、ラマン測定の結果より、モノマーの酸化・重合過程において、チオール基も同時に酸化され、生成したチオラジカル基とピロールラジカルの間でカップリング反応が進行し、その結果、π共役系の広がりが小さいポリピロール誘導体が生成したためと考えられた。一方、ジスルフィド結合を有する置換基を導入したピロールモノマー誘導体(1, 2-dithiano(4, 5-c)pyrrole)の電解重合からは、レドックス活性の非常に高い薄膜が効率良く得られた。また、得られたポリピロール誘導体薄膜の表面形態、レドックス特性およびLkドックス反応に伴う物質移動反応は、重合反応中に共存する電解質アニオンの影響を受けることが見出された。例えば、LiClO_4を電解質として用いて得られた薄膜の表面は顆粒状の析出物で覆われていたが、LiPF_6を用いた場合には、球状の析出物が得られた。
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