研究概要 |
平成14年度は、前年度に引き続きジスルフィド結合を導入したポリピロール誘導体の電気化学特性および電池材料としての特性評価を行った。しかしながら、ラマン分光測定および電気化学的水晶振動子電極法を用いてピロール環に導入した含硫黄官能基の電気化学的活性について検討を行ったが、ジスルフィド結合の酸化還元反応について明確な結果を得ることはできず、硫黄化合物-導電性高分子の分子内一体化による、チオール-ジスルフィド間の電子移動反応に対する電気化学的触媒作用の増強について明確な確証を得ることはできなかった。しかしながら、本研究により得られた高い電気化学活性を有する含硫黄ポリピロール誘導体に対しては電池材料をはじめとするさまざまな応用が期待された。 有機硫黄化合物の酸化還元反応速度を大きく加速化することが可能な導電性高分子材料として、チオフェン環の3および4位に含酸素官能基を導入したポリチオフェン誘導体についても検討を行った。その結果、電解重合法を用いてポリチオフェン誘導体薄膜を被覆した炭素電極上において、我々が高エネルギー密度リチウム二次電池の正極材料として注目している有機硫黄化合物(2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、DMcT)モノマーの酸化還元反応が、室温においてもほぼ可逆的に進行することが確認された。また、ポリチオフェン誘導体により、DMcTダイマーおよびオリゴマーの酸化還元反応も加速化されることが確認された。 さらに、有機硫黄化合物の酸化還元反応に対する金属ナノ微粒子の電気化学触媒作用についても研究を行った。有機硫黄化合物を金属ナノ微粒子表面に化学的に吸着(金属触媒-有機硫黄化合物の一体化)させることにより、電気化学的触媒活性が発現されることが示唆された。
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