研究概要 |
xLi_2S・(100-x)P_2S_5系に対し20時間のメカニカルミリング(MM)処理を施すことによって得られたガラス試料について,200〜250℃での熱処理により結晶化させた試料の室温における導電率を調べた。x=75の場合,導電率の増加の程度が小さいが,これはこの組成のガラスの結晶化温度がガラス転移温度に極めて近く,軟化融着による級密化が十分起こらないためと推察される。x=80の場合に最も高い伝導性を示すガラスセラミックスが得られた。 80Li_2S・20P_2S_5組成のガラスを様々な温度まで加熱しX線回折測定を行ったところ、200℃以上で,準安定相と思われる未知の結晶相が析出し,さらに270℃以上でLi3PS4結晶が析出,460℃以上ではLi_7PS_6結晶が析出することがわかった。200℃において析出する未知相のパターンは,Li_4GeS_4Li_3PS_4系チオリシコン結晶のパターンとほぼ一致することより,このガラスからはチオリシコンと同じ結晶構造を有する高イオン伝導性準安定結晶相が析出するために,加熱後のガラスセラミックスの伝導性が高くなるものと考えられる。 次に,加熱結晶化後の導電率の高かった300℃で加熱結晶化させた試料を固体電解質として用いた全固体電池を試作し,定電流充放電測定を行った。正極にはLiCoO_2,負極にはIn金属を用い,電流密度は64μAcm^<-2>で測定した。試作した全固体電池は充放電可能であり,サイクル数を重ねるごとに可逆性が改善された。100サイクル充放電を行っても,約100mAhg^<-1>の容量を維持しており,良好なサイクル特性を示すことがわかった。
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