研究概要 |
本研究の目的は,新しいホスト分子チアカリックスアレーン(TCA)の架橋硫黄を酸化したスルフィニル体(SOCA)およびスルホニル体(SO_2CA)に対し,キレーション制御型新規芳香族求核置換(S_Nar)反応を適用し,新しい機能性材料を創製するところにある。本年度は下記を検討した. (i)S_Nar反応の適応限界の調査 SO_2CAおよびrtct-SOCAのテトラ-0-メチルエーテル体MeO-SO_2CAおよびrtct-MeO-SOCAに求核剤LiNHCH_2Phを作用させ,4個のMeOを置換したテトラベンジルアミノ体を良好な収率(〜70%Y.)で得ている.S=O基の配向の異なるrctt-MeO-SOCAについては向かい合った2個のMeOが置換された1,3-ジベンジルアミノ体が得られた(〜30%Y.).一方,rtct-MeO-SOCAに対しLiNH_2を作用し,2個の隣接するMeOが置換したrtct-1,2-ジアミノSOCAが得られた(14%).また,炭素求核剤としてn-BuMgBrをMeO-SO_2CAに作用させ,テトラ-n-ブチル体を得た(11%Y.). (ii)新規チアカリックスアレーン誘導体の機能評価 脱ベンジン化と架橋基を還元により,テトラアミノTCA,1,3-および1,2-ジアミノTCAを得た.結晶中でテトラアミノTCAは1,3-alternate配座をとり,溶媒を包接しないことが分かった.一方,1,2-および1,3-ジアミノTCAはcone配座をとり,空孔内に溶媒分子を包接していた. テトラアミノTCAの40種類の金属イオンに対する溶媒抽出拳動を調べ,金(III)およびPd(II)に対する特異的抽出能を見いだした.Pd(II)錯体の結晶構造解析の結果,架橋硫黄とプロトンを解離したアミド基で配位していることが分かった.
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