研究概要 |
新規なホスト分子チアカリックスアレーン(TCA)の架橋硫黄を酸化したスルフィニル体(SOCA)およびスルホニル体(SO_2CA)に対し,キレーション制御芳香族求核置換(S_NAr)反応を適用し,新しい機能性材料を創製することを目的として研究を行い,下記の成果を得た。 1.S_NAr反応の適用による新規なアミノ化TCAの合成 rctt-SOCAのテトラ-O-メチルエーテル体rctt-MeO-SOCAにLiNHCH_2Phを作用させ,1個のメトキシ基をベンジル基で置換したモノベンジルアミノ体を得た。続いて水酸基の脱保護,架橋基の還元により,モノアミノTCAを合成できた。 2.S_NAr反応の位置および立体選択性を制御する因子の解明 MeO-SOCAの全異性体においてLiNHCH_2PhのS_NAr反応は隣接するスルフィニル基の向きがtransのアニソールユニットに位置選択的に進行した。結晶構造解析および^1HNMR解析から,cisのアニソールユニットはメトキシ酸素とスルフィニル酸素が反対側を向いた構造であり,求核試薬とのキレートが形成できないため,反応が進行しないと考えられる。 3.新規チアカリックスアレーン誘導体の機能評価 テトラアミノTCAの固体での有機分子包接能を調査した。X線結晶構造解析の結果,テトラアミノTCAはcone型であり空孔内に1分子のアセトニトリルを包接することがわかった。また,水素結合様式の異なる2種類のコンホメーションが確認された。また,1,2-ジアミノTCAのCu(II)錯体を合成し,X結晶構造解析を行った結果,配位子2分子がそれぞれフェノール性プロトンを解離して銅原子に配位した複核錯体であることがわかった。
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