研究課題/領域番号 |
13450363
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
光藤 武明 京都大学, 工学研究科, 教授 (90026344)
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研究分担者 |
浦 康之 京都大学, 工学研究科, 助手 (40335196)
和田 健司 京都大学, 工学研究科, 講師 (10243049)
近藤 輝幸 京都大学, 工学研究科, 助教授 (20211914)
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キーワード | ルテニウム錯体触媒 / ヘテロ原子 / 不飽和炭化水素 / スルフェンアミド / アルキン / アレーン錯体 / p-キノン錯体 / ピリジル錯体 |
研究概要 |
金属-ヘテロ原子結合の生成は、遷移金属錯体触媒を用いる不飽和炭化水素へのヘテロ原子導入反応を構築する上で重要な鍵となる反応である。我々は、早くからルテニウム錯体の高いヘテロ原子親和性に注目し、数多くのルテニウム触媒新反応を開発してきた。本研究では、これらの知見を基に、さらにルテニウム-ヘテロ原子結合生成を鍵反応とする新合成反応の開発、およびそれらの新反応を可能とする新規0価ルテニウム錯体の合成を行った。 これまで、硫黄に代表されるカルコゲン原子化合物は、一般に遷移金属錯体触媒反応において、触媒毒として作用すると考えられてきた。しかし、当研究室では最近、ルテニウム錯体触媒を用いた場合には、硫黄化合物を用いた場合でも触媒の失活がおこることなく、ジスルフィド類のアルケンへの付加反応、またチオール類のS-アリル化反応、およびS-プロパルギル化反応等が高収率かつ高立体選択的に進行することを見出し報告している。一方、スルフェンアミド類はSがδ+、Nがδ-に分極した興味深い化合物であるが、その触媒的有機合成反応への利用は極めて限られており、本研究では、遷移金属錯体触媒、特にルテニウム錯体触媒を用い、スルフェンアミド類のアルキンへの高位置及び立体選択的付加反応による新規多官能性アルケンの合成法を開発した。例えば、スルフェンアミドPhSNEt_2と電子不足アルキンであるプロピオール酸メチルとの反応を、[RUCl_2(CO)_3]_2触媒存在下、DMF中、40℃、6時間行った結果、methyl(2Z)-3-(diethylamino)-2-phenylthioprop-2-enoateが単一の位置および立体選択的付加物として定量的(収率>99%)に得られた。 次に、不飽和炭化水素への触媒的ヘテロ原子導入新反応の開発のために不可欠な新規低原子価ルテニウム錯体触媒、特に新規0価ルテニウム錯体触媒の合成を行った。まず、我々が初めて合成したRu(η^6-cot)(dmfm)_2[cot=1,3,5-cyclooctatriene : dmfm=dimethyl fumarate]錯体を出発原料として用いることにより、芳香族炭化水素との反応ではcot配位子が交換した0価(η^6-アレーン)ルテニウム錯体が、またp-キノン類との反応では2分子のdmfm配位子が交換した0価(p-キノン)ルテニウム錯体がそれぞれ高収率かつ高選択的に得られることを見出した。さらにPyboxに代表される不斉窒素三座配位子との反応では、光学活性0価ルテニウム錯体が得られることを明らかにした。
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